2008年12月16日

イクサーノフ総裁記者懇親会レポート [ボリショイ・オペラ]

先日、掲載情報としてお知らせした「イクサーノフ総裁の記者懇親会」。
今回は懇親会の様子をお届け致します。

12月9日(火)13時 都内ホテルにて
アナトリー・イクサーノフ総裁 記者懇親会 
大盛況に終わった「ボリショイ・バレエ」公演の期間中に来日していた劇場総裁アナトリー・イクサーノフ氏を囲み記者懇親会が行われました。
イクサーノフ総裁は、レニングラード・ドラマ劇場の総裁を経て、アメリカやヨーロッパの劇場で芸術マネージメントの実務を広く経験し、「文化のための資金調達法」などの著作もあります。
2000年にロシア連邦の首相よりボリショイ劇場の総裁に任命されました。
ロシアを代表する劇場として政府、民間企業のパイプ役として活躍しています。
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イクサノーノフ総裁:
本日は「ボリショイ劇場」に興味のある方々が、こんなに集まってくださいまして感謝しています。
ジャパン・アーツと私どもは日本の聴衆に「ボリショイ劇場」の素晴らしさを広めるために活動をしています。
日本に来るのは大きな喜びとともに少し緊張感を伴います。というのは、日本の聴衆は芸術に対して繊細で、オペラやバレエの古典芸術をよく理解しているからです。
今回の「ボリショイ・バレエ」公演も温かく迎えられていますが、オペラも同じように迎えて頂けると期待しています。ボリショイ劇場はロシアにおける芸術の殿堂であり、国を代表する劇場です。
日本公演でも、ロシアの作曲家や振付家による演目を日本に紹介します。今回のバレエ公演も、チャイコフスキーの「白鳥の湖」や20世紀に生まれたショスタコーヴィチの「明るい小川」が日本公演で行われています。
そして、来年6月のオペラ公演では、私たちの誇り、チャイコフスキーと偉大な詩人プーシキンが書いた「スペードの女王」と「エフゲニー・オネーギン」を持ってきます。
14年のブランクをおいて日本の聴衆にお見せするのは、この偉大な2作品だからこそで、ボリショイ劇場では19世紀から、「エフゲニー・オネーギン」の公演は2200回、そして「スペードの女王」は1200回ほど上演してきています。その間、さまざまな演出家、指揮者に演奏されてきて、「スペードの女王」は10作品目の演出となります。
今回の日本公演で上演する「スペードの女王」は、2007年ボリショイ劇場で初演されたものです。ワレリー・フォーキンによる演出で、指揮はロシアを代表する音楽家、ミハイル・プレトニョフです。ゲルマン役は、日本でもよく知られているウラディーミル・ガルージン、伯爵夫人はエレーナ・オブラスツォワです。
 「エフゲニー・オネーギン」は2006年の演出で、ロシアでも人気の演出家ドミトリー・チャルニャコフが手がけ、ボリショイ劇場の音楽監督であるアレクサンドル・ヴェルデルニコフが初演しました。
この「スペードの女王」は、外国で上演するのは日本が初めてですが、「エフゲニー・オネーギン」はさまざまな国をまわり、大好評を博しています。ラトヴィア国立劇場でも上演し、この秋は、パリ・オペラ座のシーズン開幕公演でも上演され、大成功をおさめました。ロシアのTV局がパリからロシア全土に生中継もしました。
2009年1月にはドイツ・フランスのTV局が全ヨーロッパに向けて「エフゲニー・オネーギン」を放送しますし、日本公演を終えた後は、ミラノ・スカラ座のクロージング公演として、そして2010年にはスペインのレアル劇場のオープニングでの上演が決定しています。
私たちボリショイ劇場では、外国人の歌手を招きますが、今回の日本公演ではすべてロシア人歌手によって公演を行います。
さらに一言付け加えますと、この10年における合唱団のレベルは見事です。合唱指揮者のボリソフ氏が就任してから、ますます素晴らしいレベルになりました
来年6月の日本公演を聴衆のみなさんに楽しんでいただけることでしょう。

【質疑応答】

Q:1995年の来日公演での「エフゲニー・オネーギン」は、直前になって指揮者のラザレフが来日できなかったためにあまりよくなかった印象を受けました。今回の作品はいかがでしょう。
また今、全世界的に経済危機の状況に陥っていますが、ボリショイ劇場の予算への影響はありますか

イクサーノフ総裁:
確かに14年前の「エフゲニー・オネーギン」は比較的ドライな演奏だったかもしれません。
今回の演出家のチェルニャコフは新機軸を盛り込むと同時に、繊細な表現を取り込める人です。日本の皆さんにとっては、この作品の解釈は意外だと感じるかもしれませんが、DVDになっていることや、先ほど説明した劇場とスペインのレアル劇場でのオープニングでの上演などをふまえると、自分たち以外に世界でも注目されていることがよく分かります。
世界で話題を呼んでいるのも事実ですし、注目を集めているのはとてもいいことです。
実はこの作品の解釈については、ロストロポーヴィチの未亡人ヴィシネフスカヤさんと私の新聞紙面上での対決もありました。ヴィシネフスカヤさんの意見は、古典作品については、これまでの道のりの延長上にあるべき、と強調していますが、私たちの意見はまた違います。
新しい時代に応じた、新しい作品を提供すべきだと思っています。もちろん、作品を台無しにしてはいけません。作者の意図を壊してはいけないことを忘れてはいません。
経済危機の質問に関しては、アメリカをはじめ、ほとんどの国に影響を与えていますが、ボリショイ劇場の予算の多くは国からきていますので、劇場への影響としては感じていません。2009年の国家予算は確定していますが、スポンサーからも予算削減はなく、増額してくれると約束されています。
運営する立場として、様々なリスクを無視することはできないので、世界的状況をふまえた上で、2009年、2010年の計画を立てています。
また、危機は決してマイナス面だけでなく、プラスの面もあります。苦しい時期にプロジェクトを見直すことができます。なぜか、ヨーロッパの多くの芸術家はロシアが潤っていると考えて、びっくりするほどの金額を提示してくることがありますが、その方たちには頭を冷やしてもらい、「ボリショイ劇場もきちんと予算管理ができるのだよ」と言っています。
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Q.「エフゲニー・オネーギン」は意外性のある演出だということでしたが、具体的にはどのような演出ですか。
A.イクサーノフ総裁:

説明したら面白くなくなると思うので(笑)説明はしませんが、日本のお客さんには驚いてもらえると思います。「インテリの驚き」です。というぐらいに留めておきます。
これだけはお伝えしますが、タチアナがオネーギンに書く手紙は、携帯メールだということはありません。(笑)

Q.普段、モスクワで行っているロシア・オペラ以外のものは、どのような演出家に依頼されているのでしょうか。
A.イクサーノフ総裁:
演出家では、デヴィット・パウントニー、ロバート・ウィルソン、フランチェスカ・ザンベロ、ペーター・コンヴィチュニーなどを招聘しています。また指揮者では、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー、ユーリー・テミルカーノフなどと仕事をしたいと思っております。今こそ足元をしっかり固める時期だと思います。私は物議をかもし出すタイプではないと思いますので、かつて劇場をなんらかの事情で離れざるを得なかったアーティストを呼びなおして、居心地のいい場所を作るのが総裁としての私の務めだと考えています。
ボリショイ劇場は栄光の時代を築いた指揮者、歌手にとって居心地いい場所であり続けるべきだと思います。劇場は集団芸術なので、ときには歩み寄り、ときには妥協しながら、みなで一つの良いものを作り上げることが大切です。

Q.劇場の建て直しが計画より延びている理由を教えてください。
A.イクサーノフ総裁:
モスクワの中心という立地で、地下を深く掘り下げ、さまざまなものを残しながら新しいシステムを入れる工事は、相当な手間が必要となります。すべての工事期間は7年と考えています。2005年の7月に本格的な工事がスタートしたので、2012年をリニューアルオープン予定としています。劇場の人間も工事に携わる者もみな、できるだけ早く終わらせたいと考えているので、順を追ってする工程を平行してできるように話を進め、作業期間を4年で済むようにしたかったのですが、実際に工事を進めた段階で、建物自体が非常に危険な状況であると分かりました。壁が非常にぼろぼろだったので、新しい作業過程が出てきたのです。1853年の火災で残った壁が暑さや厳冬など厳しい気候の中で150年間を経て、今日に至りました。これは建築の記念のようなもので、また残すことになりました。アーティスト、特にアーティスト生命の短いバレエ・ダンサーたちは完成を心待ちにしています。

Q:バレエ団の話ですが、なぜ81歳のユーリー・グリゴローヴィチをバレエ・マスターに呼び戻されたのでしょうか?

A. イクサーノフ総裁:
グリゴローヴィチのレパートリーは9作品あります。古典遺産の大部分を含んでいるので、いつも注目を浴びます。彼はリハーサルにもしょっちゅう顔を出し、自分の目で見て、新しい要素を入れ込みます。改修後の劇場の落としでは、グリゴローヴィチ版「眠りの森の美女」を新しい舞台美術(エツィオ・フリジェリオ)で予定しています。
また、彼は付属のバレエ学校でも生徒に教えていて、私たちのバレエ団に所属するバレエ・ダンサーの95%がこのバレエ学校出身です。2009年11月にはバレエ学校生徒によるプレミエ作品「ラ・フィーユ・マルガルデ」も予定しています。高い質、技術を持つダンサーをますます確保していきます。グリゴローヴィチの存在感はとても大きいものです。

Q:グルジア紛争でニーナ・アナニアシヴィリのステータスはどうなるのでしょうか?
A.イクサーノフ総裁:
グルジア国籍のアーティストは多くいます。今もずっと歌い続け、踊り続けています。1889年の来日公演でタチアナ役を歌ったカスラシヴィリほか、ソトキラワなどもいます。ボリショイ・ドラマ劇場の芸術監督もグルジア人のシーゼワという方です。
ニーナ・アナニアシヴィリはボリショイ劇場を4年前に離れ、グルジア国立バレエの芸術監督をしていますが、今年の12月28日のラトマンスキー監督への感謝の意味をこめたガラ・コンサートでは彼女が踊る予定です。また、12月23日にはボリショイ劇場管弦楽団からの弦楽四重奏団がグルジア、トビリシで演奏します。そういう意味で、アーティスト同士の交流は続いていて、文化という国境のないもので政治のバリアを開こうとしています。

2009年ボリショイ・オペラの公演情報
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posted by Japan Arts at 18:30 | ボリショイ・オペラ2009>NEWS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする