2010年08月20日

「影のない女」リュブリヤナ公演レポート[マリインスキー・オペラ]

リュブリヤナ・フェスティヴァル2010、リヒャルト・シュトラウス《影のない女》レポート

 
スロヴェニアの首都リュブリヤナ。旧ユーゴスラヴィアの中でもっとも西側に近い国であり、イタリアのトリエステ、オーストリアのクラーゲンフルトなどへはわずか100キロ程度。
 高みから街を見下ろすと、赤い屋根の古い建物と、コンクリートの打ちっ放しによる集合住宅が雑然と建ち並び、ハプスブルク時代の古都、旧共産圏時代の息吹を同時に感じることができる。
 今年7月から8月にかけて催されている「リュブリヤナ・フェスティヴァル2010」。同地出身の偉大なメゾソプラノ歌手マルヤーナ・リポヴシェクが登場するチャイコフスキー《スペードの女王》と並び、フェスティヴァルの目玉と目されているのが、マリインスキー劇場による、スロヴェニア初演となるリヒャルト・シュトラウス《影のない女》(8月11、12日)。来年2月の来日公演で披露される演目でもある。
 会場は多目的ホール、ツァンカルイェヴ・ドムCankarjev dom(2010年現在、数ブロック離れたところにあるスロヴェニア歌劇場は改修中)。舞台から見て客席が扇状に広がっており、どの席からも舞台が近い。
 ジョナサン・ケントの演出は、皇帝と皇后の住まう天上の世界を、紗幕を下ろして絵画的・幻想的に描く。だがこの演出の要はむしろ、雑然としたバラクの家のほうかもしれない。現代風で殺風景なその様子が、そのまま夫妻の荒涼とした心象風景を映し出すことに一役買っており、天上の美しさ・非日常性と好対照を成している。
  音楽的にも、特に第1幕と第2幕において、通常の上演ではカットされる場所もそのまま演奏されているのも注目されよう。
 歌手の中では、バラクの妻を歌ったオリガ・セルゲーエワの圧倒的な迫力に人気が集まる一方で、エレーナ・ネベラによる可憐な容姿と芯の強い歌唱で造形された皇后も出色。
 音楽監督ワレリー・ゲルギエフは、大音量を響かせるだけでなく、繊細な音の絡み合いを通じて登場人物の内面を音楽で表現することに重点を置き、個性的にシュトラウスの世界を再現して見せた。
 演奏後もゲルギエフは本作への愛情と意気込みを切々と筆者に語ってくれた。半年後に控える日本公演も、作品の真価を多くの人に伝える素晴らしい上演となることだろう。

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街中にあふれかえる「リュブリヤナ・フェスティヴァル」のポスター。
ゲルギエフと《影のない女》。

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リュブリヤナ城から市内を眺めたところ。
真ん中・高いビルの左横の建物が、会場の「ツァンカルイェヴ・ドム」。

文・写真 :広瀬 大介(音楽学・音楽評論家)



≪マリインスキー・オペラ2011≫
http://www.japanarts.co.jp/html/2011/opera/mariinsky/
[公演日程]
2011年2月12日(土) 16:00 東京文化会館 「影のない女」
2011年2月13日(日) 14:00 東京文化会館 「影のない女」
2011年2月18日(金) 18:30 NHKホール 「トゥーランドット」
2011年2月19日(土) 14:00 NHKホール 「トゥーランドット」
2011年2月20日(日) 14:00 NHKホール 「トゥーランドット」
posted by Japan Arts at 11:40 | マリインスキー・オペラ2011>レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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