2011年04月28日

インタビュー6 ポール・プリシュカ(バス)[メトロポリタン・オペラ(MET)]

METの歴史を知る、名脇役ポール・プリシュカのインタビュー。
met_2011_01.jpg

Q:来日公演で演じる「ラ・ボエーム」べノア&アルチンドロ役は、今までどのくらい演じてこられましたか?
― 何度も演じてきましたが、若い頃はコリーネの役を演じる機会の方が多かったですね。
べノア役とアルチンドロ役は、以前はバスとテノールで別々の歌手が歌っていました。
今回私は一人で両方の役を演じますが、一方の役で黒いかつらを被って演じることから、今回は彼等をひとりの人物で、“べノアが黒いかつらを被ってアルチンドロに扮している”という設定で歌ってみたいと思っています。
また、べノアという人物に関して、台詞のひとつひとつが細部まで非常によく考えて構築されているので、この役を演じるのがとても楽しいのです。これに対してアルチンドロの人物像はなかなかとらえにくいので、演じる側としては難しいですね。
ですから、この二人をひとつの役として演じることは、私はとても良いことだと思います。
歌手はどのような役を演じるにも、その役がどのような個性をもっているのかをとらえなければなりません。アルチンドロという人物像のとらえ難さ、そして、“年寄りが若い女性と一緒になろう”とする姿は、ともすれば馬鹿にされるだけで終わってしまいますので、ベノア
同一人物だという設定は、アルチンドロの人物像を良い意味で色づけできる効果があるのではないでしょうか。

Q:ベノアとアルチンドロを一人の人物として演じるというアイディアはプリシュカさんが初めてなのでしょうか?
― 「ラ・ボエーム」の上演回数は世界的にも非常に多いですし、おそらくそういった考えで演じた歌手は他にも誰かしらいたのではないでしょうか。でもMETでは私が初めてだと思いますよ。

Q:以前はアルチンドロ役をテノール歌手が歌っていたと仰っていましたが、今回プリシュカさんが歌うスコアはバスのために手直しされているのですか?
― いいえ、アルチンドロ役の声域はあまり高くないので、発声練習は必要ですが、手直しせずに歌っています。

Q:劇中ではコミカルな演技を交えて、METの聴衆の皆さんをとても楽しませていらっしゃいますね。演技中は聴衆の反応をどのように感じていますか。
― METの劇場はとても広いので、聴衆の反応がとても大きくなければ舞台の上からではなかなか気づけません。ですが、素晴らしい反応をしてくれたときは、演じる側としてもとてもインスピレーションを受けますし、大きな糧となります。
また、大きな劇場では観客席の一番遠い所まで届かなければならないので、さりげない動作の演技も大きくアクションしなければなりません。近年では劇場に字幕がついているので、全編イタリア語でも台詞の意味が分かり、聴衆の皆さんに一層楽しんで頂くのにとても大きな助けとなっています。
met_2011_09.jpg

Q:私は1991年からMETを見続けてきましたが、当時も字幕がありませんでしたね。
聴衆は字幕を読んで反応をすることもあるので、舞台上のアクションとずれてしまうことがありますよね。そこで、字幕があることによって、特に取り組んだことなどはありますか?

― 確かに何回かに一度はそういった反応のずれを感じることはあります。
そのずれに驚いてしまうことはありますが、劇場に字幕があることのメリット、デメリットを考えれば、圧倒的にメリットの方が大きいと思います。
「ラ・ボエーム」のような作品では、それぞれの役のもつエネルギーがとても大ききいので、聴衆の皆さんが舞台上の出来事に共感して、役のエネルギーに巻き込まれていくことが大事だと思います。しかし、字幕に見入っていてはそのエネルギーを汲み取れないことがあります。
ですから、聴衆の皆さんには前もって勉強をされてから聴きに来られた方が、オペラをより一層楽しんでいただけるのではないでしょうか。
オペラは簡単な芸術ではありませんので、私たち歌手にも聴衆の皆さんにとっても、勉強をすることはとても大切なことなのでしょうね。
しかし、オーケストラの演奏を楽しみにする人、歌声が好きな人や、ストーリーに関係なく音楽だけを楽しみにする人もいます。オペラの楽しみ方は、本当に人それぞれだとも思っています。

Q:1961年にデビューされて以来、METはどう変化してきたと感じますか。
― 世界最高峰のオペラ・ハウスであることは、今も昔も変わっていません。
変わった点というと、私のデビューした時代は、人間の声の質が最も重要視されていましたが、現在のピーター・ゲルブ総裁になってからは、大道具などのセットや、演じる歌手が役に合った体格であるかなど、視覚的要素を含めたオペラの全体像を重要視するようになりました。
そして最も大きな変化は、ライブビューイングの上映でしょう。
しかし、生演奏を体感するのと、映画館で見るのとは全く違います。
劇場に足を運んで得られる素晴らしい感動は味わえないかとは思いますが、オペラに身近に触れてもらい、本物のオペラを聴きに行きたいと感じてもらえたら嬉しいですね。

Q:では、今回の来日についてお聞かせください。
― 日本に行くことはとても楽しみです。
私は盆栽が趣味で、家にもたくさんあるのですが、以前来日した時には大宮に盆栽を見に行きました。6月の来日でも行けたらいいなと思っています。
また、能の劇場で働く友人がいますので、彼に会えることも非常に楽しみです。

Q:日本の聴衆の反応についてはどう感じていますか?
― 日本の聴衆は本当に勉強熱心で、オペラをよくご存知だと感じます。
しかし上演中のリアクションについては、アメリカやヨーロッパに比べるとかなり静かですね。
日本の方はその場その場で感じた気持ちに対してあまりオープンではないのでしょう。
私はそんな日本の聴衆の皆さんを、非常に礼儀正しいと思います。
上演中のリアクションがたとえ静かでも、終演後の遅い時間に、楽屋口には多くの方々がいらしてくれます。声を掛け、サインを欲しがって下さる姿に、彼等のオペラ対する熱意と愛情をとても強く感じます。
日本には熱意あるオペラ・ファンがたくさんいらっしゃるので、私たちは日本ツアーをとても楽しみにしています。

Q:それでは、最後の質問です。プリシュカさんにとってオペラとはどのような存在ですか。
― 私はよくオペラを野球に例えます。ピッチャーは、若いときは9イニングを通して投げることができますが、年齢と共にリリーフになり、最後にはクローザーになります。
私も若い頃には「ボリス・ゴドゥノフ」や「ファルスタッフ」を全幕歌えましたが、今はベノアのような役柄になってきました。ですが、ご存知のようにリリーフ・ピッチャーというのはとても大事な存在なんですよ(笑)
私は歌手として今まで様々な役を演じ、おそらく3000回以上は舞台に上がってきました。
たとえ同じ役を演じていても、日によって気分やコンディションは違います。
私にとって歌うこと、演じることは人生において終わりのないひとつの長い舞台なのです。


  

いよいよ来日間近!!『メトロポリタン・オペラ』2011
http://www.japanarts.co.jp/MET2011/

『ラ・ボエーム』
6月8日(水) 19:00 NHKホール
6月11日(土) 15:00 NHKホール
6月17日(金) 19:00 NHKホール
6月19日(日) 19:00 NHKホール

『ドン・カルロ』

6月10日(金) 18:00 NHKホール
6月15日(水) 18:00 NHKホール
6月18日(土) 15:00 NHKホール

『ランメルモールのルチア』

6月9日(木) 18:30 東京文化会館
6月12日(日) 15:00 東京文化会館
6月16日(木) 18:30 東京文化会館
6月19日(日) 12:00 東京文化会館

『MET管弦楽団 特別コンサート』 売切れ
6月14日(火)19:00 サントリーホール

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。