2012年06月08日

美しき実力派ソプラノ歌手 エルトマン王子ホール公演レポート

6月7日の王子ホールに登場したエルトマンは鮮やかなブルーのドレスをまとい、その立ち姿だけでも満席の観客を魅了しました。

2012年6月7日(木)19:00 王子ホール
モイツァ・エルトマン(ソプラノ)
ゲロルト・フーバー(ピアノ)

≪プログラム≫
フランツ・シューベルト:
 幸福 D433 / 乙女 D652 / 恋はいたるところに D239/6
 あちこち矢が飛び交っています D239/3 / 男ってみんなやくざなもの D866/3
 若い尼僧 D828 / アルセルモの墓で D504  / 月に寄せて D259
 塔の中のグレートヒェン D564 / 糸を紡ぐブレートヒェン D118
リヒャルト・シュトラウス:
 「5つの歌」より 私の心は迷う Op.48-2 / 「最後の花びら」より 万霊節 Op.10-8
 「素朴な歌」より 女の人たちは時に敬虔で物静かだ Op.21-1
 「8つの歌」より 夜 Op.10-3/何もない Op.10-2/
  口の堅い者たち Op.10-6
 「3つの歌」より 鳴り響くハート Op.29-2 
  「素朴な歌」より あなたは心の王冠 Op.21-2
 「4つの歌」より あした Op.27, Nr.4
 「クレメンス・ブレンターノの詩による6つの歌曲」より
  わたしは一本の花束を作りたかったの Op.68-2
  「6つの歌」より セレナード Op.17-2


彼女が歌い始めるとドイツ歌曲が紡ぐ世界を一緒に見ているような感覚を覚えました。
シューベルトの名歌曲、糸を紡ぐグレートヒェンではくるくる回るピアノの音色に合わせて本当に目の前にグレートヒェンがいるかのように…
後半のシュトラウスの万霊節や「4つの歌」より“あした”は特に印象的で、物静けさの中で天にとどくばかりの歌声を聴かせてくれます。
全ての歌曲をどこまでも色鮮やかに歌い、惹きこむエルトマン。
歌曲の情景だけでなく、それぞれの曲を歌う瞬間から全く違った歌い手として色々な顔を見せてくれた気がします。また歌曲には欠かせない歌心あるピアニストにフーバー氏がしっかりとエルトマンを支え、本当にすばらしいバトンの受け渡しを感じたのでした。
日本でのリサイタル・デビューで新鮮なドイツ歌曲を聞かせてくれたエルトマン。
日曜日のオペラシティでのオペラ・アリアではどんな世界に連れて行ってくれるのか期待が高まります!
チャーミングなルックスだけでなく、本物志向の方、必聴です!



モイツァ・エルトマン ソプラノ・リサイタル
2012年6月10日(日) 14時開演 東京オペラシティ コンサートホール
曲目・詳細等はこちらをご覧ください

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2012年06月05日

韓国で聴衆を完全に魅了したエルトマンの声

モイツァ・エルトマン 日本公演直前の韓国でのリサイタルはすっかりと聴衆を魅了しました。
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非常に繊細かつ透明で、ひとつひとつの音を明確に聴きとれるようなすっとした芯があり、とてもみずみずしい声です。

前半はモーツァルトとメンデルスゾーンの珠玉のリートの数々。
リート演奏で忘れてならないのがピアノ。ゲロルト・フーバーのピアノはまさに絶品。彼は歌うように演奏します。実際にリハーサルでは歌っています!
エルトマンの特徴をよくわかり、お互いに信頼をしあったリートの世界は素敵です。
後半はオペラ・アリアでモーツァルト「イドメネオ」のイリア、「ツァイーデ」、「ラ・ボエーム」のムゼッタ、「ジャンニ・スキッキ」のラウレッタ、「カプレーティとモンテッキ」のジュリエット、「ドン・パスクワーレ」のノリーナなどを披露しました。
それぞれのアリアでは、決して大げさではなく顔の表情と少しの手の動きで十分すぎるくらいにそれぞれの役を演じて、聴いている側がまるでオペラの一面を見ているような感じにとらわれました。

韓国の観客を熱狂させたプログラムは6月10日の東京オペラシティ コンサートホールで披露します。
注目のエルトマンをお聴き逃しなく!



モイツァ・エルトマン ソプラノ・リサイタル
2012年6月10日(日) 14時開演 東京オペラシティ コンサートホール
曲目・詳細等はこちらをご覧ください
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2012年05月25日

エルトマンより日本の皆様へメッセージ

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モイツァ・エルトマン ソプラノ・リサイタル
2012年6月10日(日) 14時開演 東京オペラシティ コンサートホール

曲目・詳細等はこちらをご覧ください

posted by Japan Arts at 12:04 | オペラNEWS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月23日

注目のソプラノ、モイツァ・エルトマンの魅力

小林伸太郎(音楽ジャーナリスト)
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 私がメトロポリタン・オペラに通うようになって、いつのまにか20年以上になる。ここ数年思うことは、歌手の世代交代がますます進んでいるなということだ。昨年10月に新演出上演された《ドン・ジョヴァンニ》を見たときも、その感を強くした。《ドン・ジョヴァンニ》のようなポピュラーな作品だと、どの劇場でどの役を、どの歌手が歌うということがだいたい予想がつくものだ。しかし昨年の上演は、METでそれぞれの役を初めて歌う歌手が多くキャストに組まれ、新旧一新、とても新鮮な顔ぶれとなった。ツェルリーナを歌ったモイツァ・エルトマンは、これがMETデビューであった。
 このツェルリーナという役、オペラの中では庶民の若い女性を代表したとても生き生きとした存在なのだが、難しい役だなといつも思う。あまりにもしたたかな存在に作られるのも興ざめだと思うし、それこそカマトト、ブリブリにやられてしまったら、せっかくのモーツァルトのセンシュアルでピュアな音楽が浮かばれない。その点、エルトマンの小細工のないストレートな表現は、多くの観客に好感をもって受け入れられたようだ。
 モーツァルトの音楽はとても美しいのだけれども、そのシンプルで美しいラインを完璧に歌わなければ表現できないという、歌手にとってはとても過酷な音楽でもある。ある有名なソプラノ歌手は、そのストレスに耐えきれず、モーツァルトを歌うことを止めざるを得なかったと話していたくらいだ。エルトマンのスイートで純度の高い声は、彼女が昨今モーツァルトに求められることが多いだろうことを、容易に想像させてくれる。その表現は、重箱の隅をつつくような独りよがりの思い入れではなく、何よりもまずモーツァルトに寄り添おうとする姿勢が感じられて、爽やかだ。もちろん、その可憐な容姿も、劇場では邪魔になるはずがない。
 METでは続けて、ワーグナー《ジークフリート》の森の小鳥としてもキャストされたエルトマン。舞台に本人は登場しない声のみの出演であったが、ある批評家が「鈴のような」と表現した。そんな彼女のピュアな魅力は、日本のリサイタルでも十全に発揮されるに違いない。


モイツァ・エルトマン ソプラノ・リサイタル
2012年6月10日(日) 14時開演 東京オペラシティ コンサートホール
曲目・詳細等はこちらをご覧ください

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2011年09月16日

Mo.ファビオ・ルイジがメトロポリタン・オペラ(Met)の首席指揮者に就任

9月6日付のMet発表によると、音楽監督ジェイムズ・レヴァイン氏は、痛めた背骨の手術は成功しましたが、残念ながら今秋のMetの公演をすべてキャンセルせざるを得ない状況になりました。
代わりに、2010年より首席客演指揮者(Principal Guest Conductor)を務めてきたファビオ・ルイジ氏が、新たにメトロポリタン・オペラの首席指揮者(Principal Conductor)として任命され、この秋初演を迎える新作≪ドン・ジョヴァンニ≫(モーツァルト)、≪ジークフリード≫(ワーグナー)や、カーネギー・ホールで行われるメトロポリタン歌劇場管弦楽団のコンサートなど重要な公演を指揮することとなりました。
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Metにおいて、首席指揮者のタイトルが復活したのは、なんと現音楽監督であるレヴァイン氏(任期1973年〜76年.)以来ということで、ルイジ氏への期待の高さがうかがえます。ピーター・ゲルブ総裁は、「レヴァイン氏もルイジ氏がより大きな役割を果たすことを歓迎している」と語っています。 
新プロダクション≪ドン・ジョヴァンニ≫初日は10月13日、新リング・サイクルの第3作目にあたる≪ジークフリード≫の初日は10月27日です。

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2011年05月31日

ピーター・ゲルブの記者会見をご覧いただけます[メトロポリタン・オペラ(MET)]

5/31に行われたメトロポリタン・オペラの総裁、ピーター・ゲルブの記者会見の様子を
Ustreamのアーカイブよりご覧いただけます。
http://www.ustream.tv/recorded/15072660


本日の記者会見の様子が下記、メディアで紹介されました。
≪ニュー・ヨーク・タイムズ≫
http://nyti.ms/itQFQB

≪asahi.com≫
http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201105310457.html
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2011年03月24日

ワレリー・ゲルギエフが日本支援を表明しました

ワレリー・ゲルギエフが日本支援を表明しました (ロシアのニュース・サイト LENTAより)
Gergiev.jpg マリインスキー劇場芸術総監督ワレリー・ゲルギエフは、壊滅的な震災を蒙った日本を支援するための演奏会を行ないたいと語りました。
 ゲルギエフは3月11日の震災を知るとすぐに、サンクトペテルブルグでこの悲劇に捧げるためにヴェルディの『レクイエム』を演奏しました。そして自身が芸術監督を務める毎年恒例の復活大祭フェスティバルの記者会見の席上で、「現在、日本の友人達と、日本においてどのように演奏会をすることができるか検討中です」と語りました。 
 ゲルギエフは、「演奏会を開いたところで、亡くなった人を生き返らせることはできないし、近親者を失った人たちの痛みを癒すことができないのは分っています。しかし、他者の痛みに対し、内にこもるのではなく、何かしたいというのは、ロシア人特有の精神の有り様なのです」と述べています。 また、演奏会は日本だけでなく、モスクワでも行ないたいと話し、その場合には、4月24日から5月9日までチャイコフスキー・ホールで開催される復活大祭フェスティバルの中で行なうこともありえるとのことでした。
 ゲルギエフは2004年10月にウィーン・フィルを率いて東京公演を行なった際に、ベスラン市第一初等学校で発生した人質占拠事件で犠牲になった人々に捧げる演奏会を行ってほしいと頼まれた事を例にあげました。 「演奏会について発表したのは開演のわずか24時間前だったにもかかわらず、会場は満員になりました。私たちは多額の義援金を集め、在日ロシア大使館を通じて犠牲者のもとに送りました。その時のことは忘れられません。」とゲルギエフは念を押すように語りました。
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2011年02月18日

「トゥーランドット」リハーサル・レポート[マリインスキー・オペラ]

本日も快調に「トゥーランドット」のリハーサルを開始。
華やかで壮麗なオーケストレーションの「トゥーランドット」はゲルギエフに合っている。
ガルージン、ゲルズマーワも絶好調!!

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オーケストラの音をまずはチェック

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立ち上がって指示をだすとオーケストラの音が変わる。ゲルギエフ・マジック

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男性の合唱団たちが出番待ちです。

本日は18:30より開演です!

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2011年02月14日

「トロイアの人々」日本初演は歴史的名演[マリインスキー・オペラ]

ゲルギエフ&マリインスキー劇場がベルリオーズ「トロイアの人々」を日本初演。
凄まじいゲルギエフの集中力、そしてディドン役のセメンチュクの名唱が心に残る歴史的名演となりました。

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カーテンコールはスタンディング・オベーションとブラ−ボの嵐

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ゲルギエフを呼び込むディドン役・セメンチュク

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涼しい顔で舞台袖に戻るゲルギエフ
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「トロイアの人々」リハーサル・レポート[マリインスキー・オペラ]

本日2/14 はゲルギエフ&マリインスキー劇場によるベルリオーズ「トロイアの人々」日本初演!
この超大作の日本初演に向けて入念にリハーサルを行っています。
輝かしい音色を要求されるこの作品にゲルギエフ&マリインスキー劇場管はぴったり!
開演に向けて期待は高まるばかり!

歌手陣も充実。圧巻の演奏が予想されます。
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作品冒頭の合唱部分からリハーサルを開始!

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METやドレスデンなど世界の桧舞台に次々とデビューするマリインスキーのニュースター/マルコフ(コレ―プ役)!
若々しさと深みを兼ね備えた美声は素晴らしいの一言。

ついにベールを脱ぐ大作「トロイアの人々」
歴史的な公演をお見逃しなく!!

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2011年02月13日

[マリインスキー・オペラ]初日終演後 アフターパフォーマンストークを開催

2/11 マリインスキー・オペラ「影のない女」初日は大成功
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終演後に演出家ジョナサン・ケントがアフターパフォーマンストークに登場!
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ジョナサン・ケント氏

Q:「影のない女」は難解なオペラと言われていますが。
A:おっしゃる通りです。特にホフマンスタールが書いたリブレットが難解です。しかし同時にこのオペラではR.シュトラウスの書いた最も美しい音楽を聴くことができます。
この作品が書かれた時代はフロイト、ニーチェ、ショーペンハウアーらが活躍していた時代です。知的な時代の作品と言うことが出来ると思います。ご存じのようにこの作品には二つの世界があります。一つはバラクの妻の世界、つまり日常の世界、もうひとつは天上あるいは幻想の世界です。バラクの妻は他の世界での生活を夢見て求めている。そして天上の世界で生きる皇后は現実の世界を求めています。そしてこの二人が出会い、融合することで、お互いの世界における事実と向き合います。またそれぞれが拒否あるいは欲する子供の存在もとても重要となります。影の存在はユングによれば自分が「見たくないもの」と言い換えることができます。この「見たくないもの」を受け入れることにより一人前の人間になるということも非常に重要だと思います。

Q:今回の演出の時代設定は?
A:天上の世界は幻想の世界ですので、イマジネーションの世界です。ガーゼ(紗幕)の後ろで描いています。私は今回の演出でロシア民族的なファンタジーをこの世界で描くことを試みました。一方バラクの方は世界中の工業都市にはどこにでもある現代の普通の世界を描いています。

Q:あなたはいつも照明、振付、映像など同じチームで仕事にあたっているとききましたが?
A:私たちが5人でチームを組んでおり、15年間同じチームで仕事を行っています。多くの時間をかけて関係を作ることは素晴らしいことだと考えます。また皆で一つの作品に取り組むことは私にとってかけがいのないことと言えます。

Q:ゲルギエフおよびマリインスキー劇場については?
A:ゲルギエフ氏はいわずと知れた世界を代表する指揮者の一人です。彼の音楽はある意味野性的といえるほど強烈なもので、私は彼の音楽が大好きです。
マリインスキー劇場では「エレクトラ」そして「影のない女」を演出致しました。劇場で働いている全員がプロフェッショナルな素晴らしい場所です。「影のない女」のような上演不可能と言われるほど難しいオペラを劇場の歌手だけで上演してしまうカンパニーです。このことはマリインスキー劇場のレベルの高さを表しています。私はこのプロダクション(「影のない女」)を誇りに思っています。将来的にも声を掛けていただければいつでもマリインスキー劇場で仕事がしたいと考えています。
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2011年01月25日

『ようこそオペラ!』(加藤浩子著)出版のお知らせ

音楽評論家の加藤浩子さんによる『ようこそオペラ!』が発売されました。
ビギナーズ鑑賞ガイドとなっていますが、もちろんオペラ通にも楽しめる一冊となっています!
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¥1,680
単行本(ソフトカバー)
出版社: 春秋社
発売日: 2011年1月21日
春秋社のホームページにて購入できます
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2010年12月13日

朝日新聞に見開き広告![マリインスキー、MET]

皆さん、土曜日の朝日新聞夕刊をご覧になりましたか!?
読み応えたっぷりの記事広告が掲載されました。!

2010年12月10日(土)朝日新聞 夕刊
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※画像をクリックすると内容をご覧いただけます。
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2010年11月15日

掲載情報[マリインスキー・オペラ、MET]

2010年11月号『S-age』
それぞれの公演が紹介されました。
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2010年09月14日

クラシックぴあ 2010秋号[掲載情報]

2010年秋号の「クラシックぴあ」ではMETビューイング2010-2011の上演スケジュールと2011年6月の来日公演の情報が掲載されています。
「マリインスキー・オペラ」は来日公演の魅力とイベント情報を見開きで特集。
ぴあクラシックはebookでご覧頂けます!
pia_autumn.jpg
↑上記画像をクリックしてください!
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2010年09月09日

トゥーランドットの聴きどころ

音楽評論家 加藤浩子さんが《トゥーランドット》の聴きどころを寄せてくださいました。

 《トゥーランドット》。プッチーニの遺作。未完の大作。個人的にはプッチーニの最大傑作であり、野心作だと思っている。
 もちろんプッチーニはいつも野心的だった。常に前作と違うものをと考え、試み、ほとんどの場合成功した。ワーグナーや(とくに中期以降の)  ヴェルディをはじめ、オペラ史上に輝く綺羅星のような作曲家のほとんどがそうであるように。
 けれど《トゥーランドット》の野心は飛びぬけている。悲劇を得意にしたプッチーニには珍しいハッピーエンド。美しく繊細なリアリズムを追求した彼には初めての寓話劇。貧しくはかなく愛に殉じるタイトルロールではなく、冷酷で傲慢で、男を敵視する氷のような姫君。すべてが、それまでのプッチーニのオペラからかけ離れた道具立てなのだ。実質的なヒロインはタイトルロールではなく、プッチーニ好みの身分の低い一途な女性、リューにとって代わられてしまったが。けれどだからこそ、プッチーニ・オペラに人々が求める涙を絞られるシーンも生まれた。さらにハッピーエンドのもたらす充実感もある。こんなに贅沢なプッチーニ・オペラは他にない。
 全曲が聴きどころづくめといっていい《トゥーランドット》だが、聴くひとの耳について離れないプッチーニ節が味わえるのは、やはりアリアだろう。主役たちにあてられたアリアは、それぞれのキャラクターにどんぴしゃり。カラフのアリアはロマンティストそのもの、あまりにも有名な「誰も寝てはならぬ」(第3幕)、リューをなぐさめる「泣くな、リュー」(第1幕フィナーレ)、どちらを聴いても胸が熱くなる。
 タイトルロール、トゥーランドットの最大の聴かせどころは、登場のアリア「この御殿のなかで」(第2幕)。第1幕では姿しか見せない彼女は、登場と同時に高音だらけのアリアを、しかも強い声で歌い切るという過酷な要求に応えなければならない。だがそれでこそ、「氷の姫君」の冷酷さがきわだつというものだろう。カラフが加わり、対決へ向けて高揚する後半は圧巻だ。
 ダイナミックな主役たちの間で、プッチーニ好みの可憐な花を咲かせる第2のヒロイン、リュー。彼女のアリアは、ファンが 期待するプッチーニ節そのもの。カラフの無謀な挑戦を思いとどまらせようとする「おききください、王子さま」(第1幕)の繊細さ、カラフへの愛のために命を投げ打つ覚悟を決めた辞世のアリア「氷のような姫君の心も」(第3幕)の哀切。プッチーニがどれほどリューを愛していたかは、この2曲を聴けばよくわかる。彼女が命を絶ってからの葬送の音楽は、プッチーニの絶筆となった部分であり、全曲中でいちばん涙を絞られる、プッチーニの本領がいかんなく発揮された白鳥の歌である。
 だが《トゥーランドット》のほんとうの凄みは、グランド・オペラを念頭に置いた迫力満点の合唱と、大規模で野心的なオーケストラにある。とくに第1幕はほとんど合唱と管弦楽が主役。豪華絢爛な音の絵巻の最後には、前述のリュ―のアリア「おききください、王子さま」に始まる大フィナーレが待っている。すべてが一体となってなだれこむ音の洪水には、誰でも肌に粟を立てずにはいられないだろう。

音楽評論家 加藤浩子
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2010年04月30日

ナタリー・デセイが宮廷歌手に!

2010年4月21日ウィーン国立歌劇場「夢遊病の女」の公演直後にナタリー・デセイがウィーンでの功績がたたえられ、「宮廷音楽家」の称号が授与されました。ホーレンダー総裁、オーストリア劇場連盟総裁シュプリンガー氏、フランス大使や全出演者に祝福されました。
女性で外国人であるデセイが、この称号を授与されるということは歴史的にもまれな出来事なのです。
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デセイは2010年7月、トリノ王立歌劇場の日本公演で「椿姫」のヴィオレッタを歌います。ますます彼女から目が離せません。

≪トリノ王立歌劇場≫
□7月23日(金) 18:30 東京文化会館 「椿姫」
□7月25日(日) 15:00 神奈川県民ホール 「ラ・ボエーム」
□7月26日(月) 18:30 東京文化会館 「椿姫」
□7月28日(水) 18:30 東京文化会館 「ラ・ボエーム」
□7月29日(木) 18:30 東京文化会館 「椿姫」
□7月31日(土) 15:00 東京文化会館 「ラ・ボエーム」
□8月1日(日) 15:00 東京文化会館 「椿姫」
詳しい公演情報はこちらから
posted by Japan Arts at 17:44 | オペラNEWS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月20日

メトロポリタン・オペラ、2011年6月に来日公演決定!

ニューヨークの芸術の殿堂、メトロポリタン・オペラの来日公演が2011年6月に行われます。
音楽監督のジェームズ・レヴァインと上昇気流にのっているゲスト指揮者によって、スター揃いの豪華キャストによる人気イタリア・オペラの3演目を携えての公演です。
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まもなく新サイトが立ち上がります。
公演概要を発表いたしますので、どうぞご期待ください!!


METライブビューイングのお知らせ
次回上映は11月28日からヴェルディの「アイーダ」です。
日本にいながらにして、ニューヨークでの最新オペラがスクリーンで楽しめる大人気のMETライブビューイングは必見!
http://www.shochiku.co.jp/met/


OTTAVA「Road to the Metropolitan Opera 2011 by KDDI」
RoadToTheMetIcon.jpg
インターネットラジオのOTTAVAでは「Road to the Metropolitan Opera 2011 by KDDI」と銘打った、まさに2011年6月の日本公演までの道のりを楽しむ番組が放送中です。
音楽ジャーナリストの林田直樹氏がパーソナリティを務めメトロポリタン・オペラの貴重な音源の紹介など好評です!
http://ottava.jp/index.html

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2008年12月26日

掲載情報

クラシックぴあVol.9
錦織健 プロデュース「愛の妙薬」の特集!
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公演情報はこちらから!
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2008年11月07日

ナタリー・デセイ[オペラNEWS]

アメリカのメジャー雑誌、『Opera News』にナタリー・デセイが掲載されました。
下記URLからオンライン版でご覧頂けます。彼女の魅力について語られています。
http://www.metoperafamily.org/operanews/issue/article.aspx?id=5022

≪和訳≫
 オペラ愛好家にとって我慢できるものはたくさんあるが、退屈することは普通その中に含まれていない。オペラ・ハウスの座席に座り、「まったく、何て退屈で、平凡で、時代遅れなんだ。こんなことなら家でTVドラマでも見ていた方がよかった。」などと考えている時、ナタリー・デセイの存在を思い出せば、瞬時に心をなだめることができる。デセイのすばらしい献身に匹敵する演技者が、過去30年間にいただろうか?彼女のすることなすことすべてが、くらくらするほど新鮮に感じられる。1997−98年シーズンにメトでツェルビネッタを歌ったとき、彼女は”Gross-mächtige Prinzessin”のどの箇所も注意深く折り合いをつけていたのだが、客席にいた我々には微塵も感じさせなかった。演じながら彼女は次第にそれを埋め合わせていったようだ。この役を引き受けて、彼女はスーブレット(小生意気で色っぽい小間使いの役)のマンネリズムの長年の蓄積を爆破して、脇筋に何度か余計に現れる、むしろ悲しい打ちのめされた少女として、ツェルビネッタのまったく独創的な概念をまとって現れた。

 我々は皆、繰り返し回り続ける“我がデセイ名場面集”を頭の中に持っている。特に私が挙げたいのは、シカゴ・リリック・オペラで彼女がやった「アルチーナ」のモルガーナだ。気を引きたいと願い続けていた男のからっぽのタキシードを抱きしめ、彼女は舞台をころげまわりながら“Tornami a vagheggiar”を歌った。それからメトの1998年の「ホフマン物語」のオリンピアだ。妊娠がかなり進んだ時期にあったにかかわらず、聞き取れないハイG以外のすべてを完璧にやりながら、驚嘆すべき肉体的妙技を実行した。その純粋な聴きどころも、同様に私の心から消すことができない。ルイ・ラングレとエイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団共演で収録された彼女の”Martern aller Arten”を考えてみて欲しい。ここで彼女は、コンスタンツェの自己欺瞞を歌唱的にみごとに捕らえている。すべての偉大な歌手と同じく、彼女の歌はあたかも気高いスピーチのようだ。
デセイの経歴の中でも最も注目すべき業績のひとつは、ソプラノ・レジェロの垣根を取り払った方法である。かつて、それはオリンピア達や夜の女王達などのたゆまぬダイエットを意味した。これらの役を演じることは、歌唱的に高く評価されることかもしれないが、役の演技という意味においては、一般的にはそれほど真剣に考慮されることはなかった。デセイは、アーティストの想像力は声質のいかなる生来の限界にも勝ることを、きっぱりと証明した。2007年の秋、デセイはメアリー・ツィンマーマン演出の新プロダクション「ランメルモールのルチア」で、メトのシーズン開幕(ピーター・ゲルプ総裁体制での2シーズン目)を飾った。インタビューで、デセイは自分が成し遂げようとしていたことを率直に語っている。それは、恐ろしい、掘り下げられた、本物の女優のルチアである。彼女が自分を歌手である前に女優だと定義していることを示唆することで、彼女の賛美者の中には当惑する者もいた。しかし、デセイのパフォーマンスの真のすばらしさは、一方が他方を覆うこともなく、演技と歌唱が奇跡的に、現実離れして組み合わさっていることにあるのだ。彼女は多くのクラシックのベルカント役も克服してきた。ルチア、アミーナ、「連隊の娘」のマリーを、自分のものとすることで可能な最高の形にして。1950年代と60年代のベルカント復活の時代を支配した電流を通すようなソプラノの声に思いをめぐらすとき、彼女の功績はまさに驚異的である。得てして批評家は、あたかも偉大なアーティストは過去の誰かになぞらえて定義される必要があるかのように無意味な比較に走りたがるが、デセイは実にいかなる演技者の影の中にも立脚していないと言える。
 彼女とこのことについて話し合ったことはないが、彼女が舞台に足を踏み出すとき、ひとつのことが彼女の頭の中にあるのではないか。それは観客である。実際にお金を払って劇場の席に座り、別の世界に連れていってくれることを願っている人々にとって、こんなにもすてきな贈り物となるパフォーマンスを見せてくれそうなスターを、私は今日他に知らない。私自身はレナータ・テバルディを劇場でじかに見る喜びに浴したことはないが、オペラ・ニュースの編集長F.ポール・ドリスコルはあるそうだ。彼が言うには、テバルディは劇場にいるひとりひとりすべてに、彼女のパフォーマンスが自分だけに向けて発信されていると感じさせる能力があったそうだ。モーリーン・フォレスター、マギー・スミス、テレサ・ストラータスといった、これまで私が見た偉大なアーティストの多くにその能力があると思うが、ナタリー・デセイも議論の余地なくそのひとりである。彼女にとって、全力で演じない公演などありえないかのようである。しかし私にはいつも、舞台上のアーティストの背後にもうひとりのアーティストが潜んでいて、歌唱と身体の華々しさを突き抜けて、共謀して我々に「さあ、これはあなただけのためよ」といっているような感じがするのだ。そして、まったく、我々はそれを感謝しつつ受け容れてしまうのだ。
posted by Japan Arts at 12:30 | オペラNEWS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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