2011年02月04日

歌手インタビュー1:ピョートル・ベチャワ[メトロポリタン・オペラ(MET)]

今、ニューヨークでは、ピョートル・ベチャワが「ラ・ボエーム」で活躍中。
現地のスタッフからも、「彼は本当に素晴らしい!」と絶賛の報告が届きました。
これから随時更新していく <歌手インタビュー>のトップバッターは、ピョートル・ベチャワ。
今回は、「ラ・ボエーム」そして「ランメルモールのルチア」で2度目の来日を果たします!
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Q:METで歌い始めていくつめのシーズンを迎えていらっしゃいますか?
A:
今回で5シーズン目です。

Q:これまでにMETではどのような役を歌いましたか?
A:私のレパートリーは、イタリア・オペラ、そしてフランス・オペラが中心になっています。私がMETデビューしたのは「リゴレット」のマントヴァ公爵役、その後、来日公演でも歌う「ランメルモールのルチア」のエドガルド役、「エフゲニー・オネーギン」のレンスキー役、そしてこちらも日本で歌う「ラ・ボエーム」のロドルフォ役などです。

Q:ベチャワさんのキャリアの最初は、リンツ、そしてチューリッヒの劇場・・・とヨーロッパが中心でしたね?
A:そうですね。デビューしてからしばらくは、ヨーロッパの比較的小さい劇場でキャリアを積んできました。今はヨーロッパとアメリカとの生活が半分ずつです。これは歌手としては、とても良いことだったと思います。小さな劇場で様々な経験を積み、少しずつ世界を広げていく、慎重に丁寧に進むことができたと思っています。

Q:その中で、METというオペラハウスの一番の特徴をどのように考えていますか?
A:音楽院の生徒だったころから、METで歌うというのは夢であり、憧れでした。まさか実現するとは思ったこともなかったと言っても良いと思います。METはオペラ界の頂点、オリンパス山のような存在なのですから。
METで歌い始めるまで、私は長い時間が必要でしたので、今でも信じられない気持ちになることもあります。夢がかなった(Dreams come true.)!のです。
私はこれからもMETで歌い続けていきたいと思っていますし、METが今のように最もプロフェッショナルな劇場であり続けることを願っています。
METは非常に大きな組織の劇場ですが、歌手たちをあたたかく迎え入れてくれる雰囲気があります。また、これまでに私が歌っている同じ役を、偉大な歌手たちがこれまで歌ってきたということに思いをはせると、とても名誉なことだと感じています。それは彼らが、ただ単にスターだったということだけではなく、その役を素晴らしく歌い続けてきたことへの敬意であり、と同時に、これから私の歌っている役を歌い始める歌手たちのお手本にならなくてはいけない、という責任をも感じています。
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<「ランメルモールのルチア」より>

Q:METは非常に大きな舞台ですが、音響やオーケストラとの関係をどのように感じていますか?
A:
まず「ラ・ボエーム」の舞台は、プロダクションそのものが、本物のパリのように大きいですよね。そのためオーケストラから少し離れて歌う必要があります。その中で自分がいかに、ロドルフォを歌いきることができるか、が大切だと思っています。ご存知のようにオペラは歌手だけではなく指揮者、オーケストラ、舞台スタッフのみんなとの共同作業が必要ですから。その点、METはすべてがプロフェッショナルで最高のレベルにありますので、彼等を信頼し、私は歌うことだけに集中できるのが素晴らしい!

Q:これまで、日本の舞台に立たれたことはありますか?
A:チューリッヒ・オペラの来日公演に参加し、「椿姫」「薔薇の騎士」の主役を歌いました。今度METとの来日が2回目になります。

Q:日本で歌われる「ラ・ボエーム」のロドルフォ役、「ランメルモールのルチア」のエドガルド役は、どのような役柄だと思っていらっしゃいますか?
A:ロドルフォ役もエドガルド役も、私のレパートリーの中でとても大事にしている役です。
ふたつは、ドラマティックな役という点で非常に似ています。重く、深刻な、声の負担が大きい役ですね。音楽的にも似た部分がありますが、と同時にプッチーニとドニゼッティでは歌い方(Singing Style)が大きく異なりますので、それぞれの歌い方を変えるということを、私自身は意識していますし、それが重要なことだと考えています。幸い、ロドルフォを歌ってから5日間のオフがありますので、その間にしっかり声の状態を次のエドガルド役にあわせて調整していけると思います!

Q:ベチャワさんは、ポーランドのカトヴィツェ生まれですが、ご自分がポーランド人だと意識することはありますか?
A:
もちろんです。ポーランドに限らず、誰もが自分の生まれた国の影響を大きく受けるものだと思います。音楽の伝統ということでいうと、ポーランドの歌手の養成学校がアーティストたちに多大な影響を与えていると思います。中でも私がお話したいのは、METが創立された19世紀のころ、二人のポーランド人の兄弟(Jean De ReszkeとEdouard De Reszke)が活躍していたことです。中でもヤンは彼の最後のシーズン(1902年/1903年)にワーグナーの5作品を含む11の役を演じました。これは後のカルーソーをも超えた、最多記録になっていると思います。
当時は戦争中でポーランドという国そのものもなく、METの舞台に立っていてもポーランド人だとは誰も思わない時代にでした。そのような時から約100年たった今、私が同じポーランド出身の歌手としてMETの舞台に立っていることを誇りに思うと同時に、運命的なものも感じています。
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<「ラ・ボエーム」より>

Q:ベチャワさんのこれからのご予定を教えていただけますか?
A:今METとは、5年後までのレパートリーのことを話しています。他には、ウィーン国立歌劇場やミラノ・スカラ座とも、今後の出演について相談しています。ホフマン物語や、ヴェルディ生誕200周年にあたる2013年には多くのヴェルディ作品を歌わせてもらうことになると思います。
でもその前に、今年再び日本で多くのお客さまに私の歌を聴いてもらえること、これが今一番楽しみにしていることです!



メトロポリタン・オペラ 日本公演の詳細は下記より
http://www.japanarts.co.jp/MET2011/

『ラ・ボエーム』
6月8日(水) 19:00 NHKホール
6月11日(土) 15:00 NHKホール
6月17日(金) 19:00 NHKホール
6月19日(日) 19:00 NHKホール

『ドン・カルロ』

6月10日(金) 18:00 NHKホール
6月15日(水) 18:00 NHKホール
6月18日(土) 15:00 NHKホール

『ランメルモールのルチア』

6月9日(木) 18:30 東京文化会館
6月12日(日) 15:00 東京文化会館
6月16日(木) 18:30 東京文化会館
6月19日(日) 12:00 東京文化会館

『MET管弦楽団 特別コンサート』
6月14日(火)19:00 サントリーホール

2011年01月19日

「影のない女」の演出家ジョナサン・ケント[マリインスキー・オペラ]

演出家ジョナサン・ケントが「影のない女」についてYOUTUBEで語っています。

『影のない女』
台本:フーゴー・フォン・ホフマンスタール
指揮:ワレリー・ゲルギエフ 
演出:ジョナサン・ケント
※ジョナサン・ケントは現在、藤原紀香さん主演の「マルグリット」の演出もし、大変注目をされています。

≪翻訳≫

 (ジョナサン・ケント氏は、俳優および演出家としてキャリアを積み、演劇の世界で成功を収めた後、オペラの演出も手掛けるようになりました。このリヒャルト・シュトラウスの「影のない女」は、彼がマリインスキー劇場で演出を担当した2作目のオペラです。)
 
私は2年前に「エレクトラ」の仕事で初めてマリインスキー劇場に来ました。その時は、ここがどのような劇場なのか、どんなことを期待できるのか、私にはよく分かりませんでした。マリインスキーの公演を見たことがありましたが、ここ、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場に来るのは、それが初めてだったからです。私も当然のことながら、マリインスキー劇場を実際に見て、その歴史を感じさせる佇まいに圧倒されました。オペラだけでなくバレエもですが、とにかく、非常にロマンチックで偉大な歴史的遺産を持った劇場なのです。しかし、それと同時に、私はここで働いている全てのアーティストたちが持っている目的意識にも、強い衝撃を受けました。彼らは、時には大変ハードな状況下での仕事を余儀なくされることもあるのですが、それにも関わらず、全員が常に高い目的意識を持って、誠心誠意仕事に打ち込んでいます。「エレクトラ」の仕事では、私は度々、当惑したり、まごまごしたり、ということがありました。というのは、ここではシステムも全く違いますからね。しかし最終的には、私は、この劇場と、ここで働く人たちのことを、この上なく称賛するようになり、この劇場が大好きになりました。

 ゲルギエフが指揮するリヒャルト・シュトラウスは、本当に素晴らしいです。極めてロマンチックで情熱的な解釈なのです。そして、「エレクトラ」では、ラリッサ・ゴゴレフスカヤとの共演がありました。彼女の右に出る歌手はいませんよね。彼女をはじめとする素晴らしいキャストを得て、ゲルギエフはとても喜んでいました。結果的に、この公演は、彼にとっても非常に良い経験になったと思います。その後、ゲルギエフと私は、次回公演の演目について相談しました。最初は「何か別のものを」という話でしたが、結局は「しばらくシュトラウス作品を続けてみてはどうか、もう少しシュトラウスを掘り下げてみようじゃないか」という結論に至りました。

 今回の演目「影のない女」は、演奏される機会が比較的少ない作品です。というのは、まず音楽の大部分が非常に難しく、演奏するには多大な力量が必要とされる作品だからなのです。ただ一人か二人のパートが難しいというのではなく、五人ものパートが極めて難しいのです。また、スコアも台本も実に複雑で難解です。ですから、この曲を演目とするのは、ある意味、「挑戦」だったわけです。しかし、以前に一度、ここで仕事をしたことがある私には、これは、マリインスキー劇場がきちんと結果を出せる「挑戦」であることが分かっていました。

 私はこのオペラが「とても難解な作品だ」と言いましたが、実は、このオペラの最後では、ある種の楽観性といったようなものが提示されていると私は思います。こうした楽観性は、リヒャルト・シュトラウスとホフマンスタールが「魔笛」にも見出していたものなのでしょう。そして、「魔笛」と同様、この作品にも一連の「試練」があります。バラクの妻と皇后、つまり、中心人物となる女性二人が、こうした「試練」を乗り越えていきます。そして、彼女たちは、最後に自分たちそれぞれのアイデンティティを確立するのです。この作品で私が興味深く感じるのは、二人の女性の生き方が取りあげられているという点です。二人の女性が自分たちのおかれた社会の中で、それぞれに与えられている役割を見つけようと葛藤します。そしてついには、彼女たちが自分の役割を見つけることで、アイデンティティを確立し、自己完結を達成するわけです。この点が私は大変面白いと思います。

ところで、「影のない女」が書かれたのは、皆さんもご存じのように、20世紀はじめのウィーンです。当時のウィーンは、知的探求と思想のるつぼでした。フロイト、ショーペンハウアー、ニーチェといった知識人たちが活躍していた、ヨーロッパの知的活動の中心地でした。この作品に出てくる数々のテーマは、こうした人々の理論を表しているとも言えます。例えば、「影」といのは、ユングの理論を表しているのです。そもそも「影」という概念自体が、ユング的な発想ですね。いや、この概念はユングの論文以前からもあったわけですが。いずれにしても、同じ考え方です。つまり、アイデンティティを確立するためには、人はいつか自分の闇の部分、すなわち「影」と対峙し、それを受け入れなければならないのです。

 私は、この21世紀はじめという現在においても、社会における女性の役割について考察することは、とても興味深いことだと思います。どのようにして女性は、仕事を持つ人生を選ぶ人と、子供を産み育てることを選ぶ人に分かれるのか。これは実に興味深い議論ですね。そして、これと同じ議論が、今から100年も前に、シュトラウスとホフマンスタールの間で、彼らなりの考えに基づいて交わされていたわけです。

 このオペラは、二つの世界から構成されています。一方は、おとぎ話の世界です。まあ、このオペラには、実際、おとぎ話そのもの、といった部分もあるのですが。その世界は、皇帝や皇后がいる神秘的な空想の世界です。もう一方の世界は、バラクと彼の妻がいる現実の世界です。こちらの世界では、平凡で、つらく、みじめな生活が営まれています。それは、バラクの妻があこがれたような、ロマンチックで精神的な満足が得られる空想の世界とはかけ離れた世界です。ストーリーは二つの世界の間を行き来しますが、第三幕では、これら二つの世界が合わさった形になります。

 (皇后とバラクの妻の対決を見ているうちに、聴衆はたいてい、どちらかの側につくと言われていますが、ケントさんは個人的には、どちらの女性に、より共感を覚えますか。)
 
二人の女性は、それぞれ自分なりに、アイデンティティを追い求めて葛藤しています。どちらに対しても、とても共感するので、私は、どちらか一方が、もう一方よりも特に好きだということはありません。



≪マリインスキー・オペラ「影のない女」≫ 
2月12日(土)16:00 東京文化会館
2月13日(日)14:00 東京文化会館
詳しい公演情報はこちらから

2010年07月05日

ゲルギエフにインタビュー![マリインスキー・オペラ]

現在、マリインスキー劇場で取材をしている弊社スタッフからゲルギエフのインタビューが届きました!「トゥーランドット」について答えてくれました。

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Q:マリインスキー劇場版『トゥーランドット』の特徴はどういったところにあるのでしょうか?

ゲルギエフ(G):華やかな色彩感、ということでしょうか。フランスから招聘した演出家のシャルル・ルボーも、舞台装置や衣裳のデザイナーたちもお客さんに鮮やかな色彩を感じてもらおうと大胆な試みを行っています。
新しい感覚を盛り込もうとしたり、何か非日常的なものを取り入れようとしたりしてスタッフ同士が力を出し合って完成にこぎつけたプロダクションだと思います。奇をてらい過ぎてオペラの主題と全くかけ離れてしまった舞台装置や衣裳を見かけることがよくありますが、今回のプロダクションはそういうものとは全く違います。ある意味ではクラシカルなプロダクションでもあります。NHKホールの舞台は広いので、この豪華な舞台装置や衣裳がより映えると思います。

Q:「トゥーランドット」役のグレギーナに対する印象をお聞かせください。
G:
グレギーナとは何回も共演して気心も知れています。彼女は現在、世界のトップクラスに位置する「トゥーランドット歌手」と言っていいでしょう。

Q:『トゥーランドット』はマリインスキー劇場の主要なレパートリーとなった、ということでしょうか?
G:そうですね。人気があるオペラの一つですね。ドイツやイギリスでも、アメリカでも公演してきましたし、私たち自身が大好きなオペラです。今、サンクトペテルブルグのお客さんの間でも人気が出てきましたね。

Q:『トゥーランドット』の楽曲の解釈という点ではあなたの独自性はどんなところにあるのでしょうか?
G:
奇をてらいすぎると、台無しになります。美しい声、明澄な合唱、明快なオーケストレーション、そして、何よりもプッチーニが前面に出ること。指揮者や演出家があまり出すぎてもいけません。
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Q:今回の演出スタッフに関して何かコメントをいただけますか?
G:今回のスタッフとは数年前に一緒に仕事をしたことがあり、演出家のシャルル・ルボーについては今回、私から委嘱して参加してもらいました。
彼の演出は成功していると思います。特に、謎解きの場面が印象的です。また、舞台中央にセットした円形の台から出演者を登場させたり、台の傾斜を場面ごとに変化させたり、子役に長い白装束を着せる(純粋さを暗示する)など、発想がユニークですね。日本のお客様にも喜んでいただけると思いますよ。

Q:日本の観客の皆さんに何かメッセージをいただけますか?
G:まず、日本で皆さんと、また私たちの劇場の公演でお会いできる日を楽しみにしております。ともかく、音楽を聴いて、美しい声に酔いしれていただきたいと思います。
豪壮な舞台と色鮮やかな衣裳を見て楽しんでいただきたいと思います。
私たちはプッチーニの僕(しもべ)ですから。私たちとしては、お客様がオペラを見て劇場から帰る時に、もう一度見てみたいと感じていただけるよう、精一杯努めたいと思います。


♪公演詳細は下記をご覧ください。
来日公演は2011年2月! グレギーナの出演日は2月19日、20日です。
http://www.japanarts.co.jp/html/2011/opera/mariinsky/turandot.htm


マリインスキー・オペラ日本公演専用のツィッターアカウント
@mariinsky_opera

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